2021.02.04 18:082-2 花は種になる 夏休みになって帰ってきた我が家はなんだか真新しく見えた。クリスマスもイースターも戻ってきていたのに不思議なものだとハリーは思った。 だが数日もたてばその違和感はどこかに飛んで行ってしまって、ハリーは気ままに森へ行ったり温室に籠ったりしながら毎日楽しく過ごしていた。 ドラコのワシ...
2021.02.04 16:392-1 潜む牙は蛇 イングランド南西部に位置するウィルトシャー州。長閑な風景の合間に古くから息づく魔法の影がちらちらと姿を見せるこの地にマルフォイ家は屋敷を構えていた。 林に囲まれた丘の天辺に白亜の館がそびえている。静かな宵闇の中、窓から漏れる柔らかい明かりがその館に人の気配を感じさせ...
2021.02.04 16:371-14 この日は戻らないドラコが急に冷たくなった。罰則明けの会合以来、ハリーは昼休みに図書館へ行けなくなった。本当に嫌われてしまったと知るのが怖かったからだ。呪いがかかってるなんて気にしない、そう言うのは簡単だ。バチルダやしもべ妖精の前ではハリーはまさしくそう振舞っていた。だけど心の奥底では信じられてい...
2021.02.04 16:361-13 届かなかったケンタウロスに追い返され、二人は来た道をとぼとぼと戻っていた。話す言葉もなく、ただ無言で目の前の雪に足跡をつけていく。夜空のわずかな明かりが雪に反射して少しだけ発光している気がした。「なんで、僕にあんなことを言ったんだと思う?」脅されたショックから幾分か回復したのか、ハリーが口を...
2021.02.04 16:351-12 無知の過ち「絶対にスネイプは賢者の石を狙ってない。」ベットに寝そべり、天蓋を睨みつけながら今日の記憶に向かって言い切る。ロンやネビルがどれだけ疑おうと、ハリーは意見を変える気はなかった。彼らにもそれを証明したいが、いかんせんスネイプの性格が悪過ぎる。身内贔屓だし、グリフィンドールを目の敵に...
2021.02.04 16:341-11 相反しても愛長いようで短かったクリスマス休暇が終わり、ハリーはホグワーツに帰ってきた。「クリスマス休暇、どこか行った?」同室の女の子たちとトランクの中身を片付けながら雑談をする。「ぜーんぜん。ダイアゴン横丁のクリスマスマーケットに行きたかったのに混んでるからダメだって。うちの母さんケチでしょ...
2021.02.04 16:311-10 花は語らない朝も早く、窓の外は白い靄に包まれている。ハリーはまだ自分の部屋で眠っていた。早起きな妖精たちはすでに働き出している。冷えた家を温めるためストーブに薪をくべ、朝餉の用意を始めていた。裏の森から小鳥の歌声が聞こえてくる。原っぱには霜が降りて、朝焼けにキラキラと光っていた。だんだんと太...
2021.02.04 16:301-9 見ている妖精たちはご馳走を用意してハリーの帰りを待っていた。温かな室内の空気がハリーの冷えた顔を包む。彼女が重そうに吊り下げているトランクをクリーチャーが受け取って、消した。「お嬢様、寒かったのではございませんか?ベルはお風呂の用意をしておきました。先に入っていらしてください。」ハリーの...
2021.02.04 16:291-8 光の取り分ハラハラと降る雪を見上げる。グリフィンドールの塔から見る校庭は真っ白だった。やっと荷物を詰め切ったトランクを持ち上げる。中身は増えて無いはずなのにどうしてこんなに重くなったのか、不思議に思う。「エレノア、メリダ、準備出来た?」一緒に下まで行こうと約束していたルームメイトに声をかけ...
2021.02.04 16:251-7 鏡合わせに気付かない「おやおや、グリフィンドールの異端児は今日も闇の魔術にご執心かい?」入学してから幾週か経った昼休み、ハリーはいつものように一人きりで本に埋もれていた。築き上げた本の壁の向こうから、つい数週間前に知り合ったばかりの声が聞こえた。難しい言葉の羅列を読み過ぎて重くなった頭をもったりと上...
2021.02.04 16:241-6 花を透かして九月一日、待ちに待ったホグワーツ入学の日だ。ハリーはいつも通り自室のベッドで目覚めた。ぱかりと目を開けると真っ白な天井が退屈に自分を見下ろしていた。外では小鳥が朝の歌を歌っている。ベルがきれいに洗濯して花の香りがするシーツから身をおこした。すぐ脇に置いてあったメガネを手探りで探す...
2021.02.04 16:241-5 閑話 形だけ、幸せ閑話 スネイプの話己の人生で最も輝かしい時はいつだと聞かれたらスネイプは間髪おかず少年時代だ、と答える。他の年代と比べるまでもない。少年期にスネイプはリリー・エバンスと出会ったし、彼女と一番濃密な時間を過ごしたからだ。スネイプの幸せは全てリリーの形をしている。そう言っても過言では...